ドライアイとは
ドライアイは、涙の分泌量が減少する、あるいは涙の成分が変化し良質ではない場合に引き起こされる目の乾燥症状です。
近年の勤務スタイルの劇的な変化(オフィスワーク、パソコン作業の増加)はドライアイの有症状割合を増加させており、非常に一般的にみられる症状と言えます。
ドライアイの原因
涙(涙液)は涙腺と呼ばれる眼球近傍の組織で産生され、眼球表面上に向けて分泌されています。
定期的なまぶたによる瞬きを通して涙液は十分に拡散し、目の潤いを保っています。
ところが何らかの原因によって、この涙液産生がなされない、あるいは涙腺からの分泌がなされないという状況になると、眼球は著明な乾燥状態となりドライアイに伴う種々の症状を自覚するようになります。
これらをきたす要因のうち、加齢は比較的重要な要素と言え、歳を重ねると涙液の分泌量そのものも減少することにあわせて、その質も低下し眼球へ十分な潤いを与えることができなくなります。
その他の要因としては近年のVDT作業(モニターやディスプレイを通した作業)の増加はドライアイの増悪因子としてよく知られています。
また、コンタクトレンズの使用、喫煙などもドライアイの原因となるので注意しておく必要があります。
一部の内服薬には涙液の分泌量を直接的に減少させるものもあるので、内服によって症状が強く出ていると感じる場合はかかりつけ医に相談し、症状の推移を観察の上、適宜の内服薬調節をしてもらうなどの対応が必要となります。
涙液の質を障害する原因としては、マイボーム腺機能不全もあります。
涙液がその機能を果たす上で重要な油分は、マイボーム腺から供給されていますが、このマイボーム腺が詰まってしまうと油分の供給が不足し、涙液の質を低下させ結果としてドライアイ症状を継続して自覚するようになります。
結膜弛緩症と呼ばれる病態においては眼球表面での涙液保持能力が低下し、結果としてドライアイ症状を呈するようになりますが、これも加齢がひとつの要因として知られています。
シェーグレン症候群をはじめとしたある種の自己免疫性疾患群においては、涙液や唾液の産生が良好に行われずドライアイの症状として外来を受診することがあります。
これらの多くは追加的な血液検査によってスクリーニングを図ることができますので、上記のような症状の自覚だけで高機能病院を最初から受診する必要はありません。
まずは近隣の眼科や内科クリニックに相談に行くことが大切です。
ドライアイの症状
ドライアイでは、文字通り目の乾いた感じ(乾燥感)が中核症状となります。
この乾燥感にあわせて、眼球がごろごろするような感覚(異物感)や光を極端にまぶしく感じる(羞明)、目の疲れやすさを感じる(易疲労感)などが高頻度にみられる周辺症状です。
強い目の痛みや自覚症状が継続したまま治療介入や改善策の導入がなされない場合、時として視力の低下を示すこともあるので、症状を自覚する場合は放置せず近隣の眼科クリニックに相談することをおすすめします。
ドライアイの治療方法
ドライアイの治療でもっとも大切なことは、増悪因子を取り除くことです。
つまり、目を酷使するような環境にある方は、適切な休息や環境調節(作業姿勢、周辺光、湿度など)、必要に応じた専用メガネの利用も時として有効です。
生活習慣の改善はドライアイにも有効で、適切な運動と睡眠時間の確保、食生活の改善、禁煙、節酒などで症状の軽減を自覚できます。
原因疾患として自己免疫性疾患などをお持ちの方は原疾患の治療が優先されますが、対症療法的に用いることのできる点眼薬(人工涙液やヒアルロン酸製剤など)も十分に効果が期待できますのでかかりつけ医を持つメリットは大きいと言えます。
症状が非常に深刻である場合や点眼薬によって著明な改善がみられない場合などに、涙点プラグという栓を涙液の出口にすることで、眼球表面での涙液の拡散を図る処置も実用化されています。