腸捻転とは
腸捻転とは、文字通り腸管のねじれによって生じる機械性イレウス(物理的原因による腸蠕動障害)の一種です。
ねじれ部より肛門側(下部)の内容物に移動障害が起こり、場合によっては血行不良から腸管壊死に至ることがあります。
腸捻転の原因
腸捻転は、腸管が物理的にねじれることが直接の原因となりますが、多くの場合で便秘などによって自重を増した腸管が壁への固定部位を支点としてまわってしまい絞扼状態に陥ります。
消化管機能および蠕動運動が低下しやすい高齢者に起こりやすいことが知られており、また男性は女性に比べて骨盤がせまく、一度ねじれてしまった腸管が元に戻るだけのスペースが確保されていないことが多いため腸捻転は男性の方が起こりやすいとされています。
部位としては、大腸のように壁に比較的強固に固定されている腸管より、S状結腸のように可動域として自由度の高い腸管の方がより腸捻転が起こりやすくなります。
腸捻転の初期症状
腸捻転を起こした当初は消化器症状が主体となります。
したがって、明らかな発熱を伴わない嘔気や嘔吐、便秘などを自覚します。
腸管部はねじれて内容物の通過を阻害しているため、食物は蓄積し強いお腹の張りを感じるにも関わらず、おならが出ない状態となります。
臨床的にもこの「張りがあるにも関わらずガスが出ない」という訴えが重要で、高齢者のこういった主訴では腸捻転を念頭に置く必要があります。
腸捻転の症状
時間の経過に伴い、このような張りは強い痛みに変わることが一般的ですが、好発年齢と言える高齢者層では明らかな痛みを自覚しないケースも多くあります。
ただお腹の張りと便秘を主として訴えている場合、腸蠕動低下に伴う慢性便秘症を疑いやすく(当然頻度も圧倒的に多いです)、深刻な消化器疾患のひとつである腸捻転が見過ごされてしまうこともあります。
こういった場合ではその先にある腸管壊死や、それに伴う腹膜炎などに至りやすく、場合によっては致死的となってしまうため十分な注意が必要です。
患者本人やその家族においては、医師に症状を伝える際は腹部症状にあわせて必ず「おならの出具合」を伝えるようにしましょう。
腸捻転の治療方法
腸捻転が積極的に疑われれば、腹部のレントゲン写真を撮ることで容易に診断を得ることができます。
腸管壊死や腹膜炎を起こしていない症例では、内視鏡による整復と減圧が行われます。
多くの症例で、この内視鏡的手術によって根治しますので、入院期間も数日から1週間程度で済むことも珍しくありません。
一方で、腸管壊死や腹膜炎を起こしてしまっている場合には、開腹による緊急手術の適応ですが、数%から数十%に術中死亡を認める楽観視できない状態と言えます。
また、重篤な腸捻転や繰り返す腸捻転は開腹での根治手術の適応となります。
この手術では原因となっている腸管部を切り取り、除去するというものです。
上述のように好発年齢が高齢者層にあるため、根治療法に伴う長期入院は全身機能低下のリスクとなり退院時には寝たきりになってしまうことも珍しくありません。
腸捻転の治療法選択が時として非常に悩ましいものとなってしまうのはこのためです。