心房細動とは
心臓は本来きわめて一定のリズムをもって拍動し、血液を全身に送り届ける機能を持っていますが心房細動ではこのリズムが不整となり、拍動の速さ自体も大幅に上昇する頻脈性不整脈のひとつです。
心房細動の原因
心房細動の直接の原因は心筋の異常運動ということになりますが、これをきたすようになる背景が複数同定されています。
種々の身体的・精神的ストレスや過労、睡眠不足、脱水、喫煙などです。
他の多くの疾患と同様に加齢も大きなリスク因子となります。
また、弁膜症や虚血性心疾患などの心臓合併症をお持ちの方は、心房細動の発症リスクがより高まることも知られています。
こういった背景疾患がないにもかかわらず発症に至った心房細動を、孤立性心房細動と分類することもあります。
心房細動が出た時の症状
強い動悸感(胸がどきどきする)、胸苦しさ、息切れを自覚することが多いですが、特段の症状を呈さないこともあります。
こういった場合には医療機関の受診に結びつかず、放置されてしまうことになります。
やはり定期的な健康診断の受診が肝要で、医師による聴診や心電図検査によって、容易にこれらの無症候性心房細動も同定されます。
また心房細動では、手首の脈をとると不整なリズム(一定でない脈拍)があることをご本人でも確認することができます。
心房細動の治療方法
心房細動の治療は、
・正常な心拍リズムに戻す。
・脈拍数をコントロールする。
・血栓塞栓の予防
の3点が重要となります。
心拍リズムが一定でなく脈の速い状態が継続すると、心臓の正常なポンプ機能を損ない全身への効率的な血液供給を行うことができません。
また、心房細動は血流の淀みを生み、これが血栓となって脳梗塞などの深刻な血栓塞栓症を引き起こします。
したがって、心房細動を持つ患者さんの多くで抗血栓療法が並行して行われます。
基本的にこれらの治療は内服(飲み薬)によって行われます。
心房細動のコントロールがつかない、または急性期の重篤な状況にある、などの場合に金属電極から直接通電し、正常リズムへのリセットを図る電気的除細動が選択されることもあります。
また、心房細動の多くは心筋の特定部位に異常電気信号の原因を認め、これをカテーテルを用いて焼き切ることで根治を図るカテーテルアブレーション術もあります。
さらにカテーテルアブレーションが無効である場合などには、メイズ手術と呼ばれる開胸手術が行われることもあります。
心房細動と脳梗塞のリスクについて
上述のように、心房細動を放置することは高確率に血栓の発生から脳梗塞などの塞栓性疾患に結びつきます。
これらの疾患は致命的であることも多いですが、死を免れたとしても半身麻痺などの深刻な後遺症を招き著しいQOLの低下につながります。
したがって、心房細動を指摘された方(多くは健康診断での指摘などによる)は必ず医療機関を受診し、必要な治療介入と経過観察をすることが欠かせません。