メニエール病とは
メニエール病はめまいを主症状とする耳鼻科疾患のひとつで、難聴を伴うことを特徴とします。
ぐるぐると回るような(回転性の)めまいを引き起こし、時として日常生活に支障をきたすことから患者のQOLに関わる重要な疾患と言えます。
メニエール病の原因
外界に発生した音は、人体で外耳から内耳を通して脳で信号処理されることで音として正しく認識されます。
この内耳は、通常一定量の液体が含まれていますが(内リンパ液)、これが過剰となってしまうことで三半規管の働きが障害されることが直接の原因として考えられています。
三半規管は身体の平衡感覚をつかさどる器官なので、この障害は直接めまいを惹起することになります。
また、内耳器官のひとつである蝸牛も障害され、難聴や耳鳴りといった深刻な耳鼻科症状を伴います。
メニエール病の症状
メニエール病では、特段の誘発因子なく深刻な回転性めまいを起こします。
時に消化器症状(嘔気・嘔吐など)を伴うことから、内科などの初診時には食物摂取歴などによって別の感染性疾患として対処されることもしばしばあります。
強くめまいやふらつきを自覚するときは、このような症状を伝え忘れないようにすることが大切です。
めまい発作自体は通常数時間程度持続し次第に軽快しますが、発症側の聴力は改善と増悪を繰り返し、徐々に低下するようになっていきます。
難聴は耳閉感(耳が塞がったような、こもっているような感覚)や耳鳴りとして始まることも多いですので注意が必要です。
鑑別すべき(区別すべき)疾患として「良性発作性頭位めまい症」がありますが、こちらでは一般的に姿勢によるめまい症状の増悪がみられ、メニエール病ではそのような姿勢による症状の変化は一般的ではありません。
また、良性発作性頭位めまい症では難聴を起こしませんのでメニエール病診断においては難聴が伴うかどうかが重要な臨床所見として考えられています。
メニエール病は完治するのか
メニエール病の直接の原因は、上記のように内リンパ液の過剰であると考えられています。
一方で、どのような背景によって(原因によって)この内リンパ液が過剰に産生されるのかは未だ明確となっていません。
したがって、一般的に考えられているように「なかなか完治しない病気」であるというのはある意味で真実です。
ですが、近年の医療技術の進展に伴って治療の選択肢は非常に多様化し、症状のコントロールは十分に行うことができます。
また、ストレスが病態を悪化させることも明らかとなってきていますので、生活環境と習慣をうまく調整し根気強く種々の治療を継続することで完治に至る方も少なくありません。
メニエール病の治療方法
メニエール病の治療には、一般的なめまい症に対する治療薬である抗めまい薬を中心として投与し、めまい症状の発作発現を抑制します。
これと並行して、増え過ぎた内リンパ液を体外に排出する目的で利尿薬の投与も行われます。
さらに規則正しい生活習慣と食生活、軽い運動習慣の導入などを併せて行うことで多くの症例でめまい症状のコントロールがつくようになります。
過度のストレスが背景にあるような場合には、抗精神病薬が併用されることもあります。
また、繰り返す重度の発作によって、正常な日常生活を送ることができないようなケースにおいては、内耳器官に直接穴を開けることで内リンパ液を外に逃すような外科的手術が選択されることもあります。
いずれにせよ、「メニエール病は治らないもの」と諦めてしまうのではなく、かかりつけ医をつくり症状に応じた適切な内服コントロールとアドバイスを継続的に受けることが欠かせません。