肺水腫とは
肺水腫は、種々の原因によって肺内における毛細血管から水分が滲み出し、肺胞が液体によって満たされてしまう状態を指します。
この病態においては、肺本来の酸素の効率的な取り込みが阻害され重篤化すると呼吸不全に至ります。
肺水腫の原因
肺水腫に至る原因は多くありますが、血液中の主要なタンパク質であるアルブミンが減少し、膠質浸透圧が低下するために血管内での水分保持能力が下がることで血管外(肺胞)に水分が滲み出してしまうものがしばしばみられます。
肝機能障害によってアルブミンそのものの合成がうまくいかない場合や、ネフローゼ症候群などの腎機能障害に伴って、このアルブミンが不適切に排出されてしまう場合などがこれにあたります。
また、特定の心臓疾患、特に僧帽弁狭窄症や左心不全などでは、毛細血管内圧が上昇することで水分が血管外へ押し出されてしまい、肺水腫に至ることもあります。
肺炎などに伴い、過度の炎症が肺に起こっている際などには毛細血管の血管透過性が亢進し、水分が漏れ出てしまうケースもあります。
その他に、外傷性、薬剤性、低圧環境(高地など)も肺水腫の原因として一般的に知られています。
肺水腫の症状
肺水腫での症状の主体は強い呼吸困難感にあります。
継続する呼吸困難感は窒息への恐怖を惹起するため、強い不安感や不穏を認めることもよくあります。
顔面・皮膚の蒼白やチアノーゼ、著しい発汗、時に血痰を伴う咳などを合併します。
しかし明らかな喀血にまで至ることはまれです。
脈拍は著明にはやくなり血圧が乱れるため、正常な血液の心拍出がうまくいかず、循環動態が不良となることもあります。
こういった所見は、肺水腫の重篤化のサインですので十分な注意が必要になります。
肺水腫の治療方法
低酸素に伴う呼吸苦を呈している例が多くなりますので、まずは酸素が投与されます。
ただし、継続する低酸素状態があった場合、換気不良に伴って二酸化炭素の貯留が進んでいるケースがあります。
このような場合に、突然高濃度の酸素投与を行うとCO2ナルコーシスと呼ばれる病態に至って呼吸抑制がかかり、最悪の場合では意識障害となってしまいます。
事前に血中のCO2濃度を測定しておくこと、最初から高濃度酸素を投与せず次第に上げていくことが欠かせません。
酸素投与によるコントロールを行った上で、肺水腫をきたすようになった原因に対する治療を開始します。
上記のように、肺水腫には種々の原因が存在しますので画像検査や血液検査を含めて全身検索を要することもしばしばです。
これまで定期的な受診をしていなかった患者などにおいて、この際悪性疾患を認めることもあります。
また、余分な水分の除去をはかるための利尿剤の使用や、肺の炎症をおさえるために種々の抗炎症剤の使用が検討されます。
特に重度の肺水腫により呼吸困難に陥っているケースでは、気管挿管の上で人工呼吸器が導入されることもあります。
この際、気道内圧を陽圧にする特殊な呼吸管理が実施されます。