コレラの症状
コレラは、コレラ菌によって汚染された飲食物を口にすることによって、感染する細菌感染症です。
下部小腸で定着し増殖しますので、通常は下痢を初期症状として発症することになります。
軽症であれば下痢(軟便)が継続しますが、深刻な脱水は伴いません。
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重症のコレラの場合、腹部不快感を自覚した後、急激な下痢と嘔吐が出現し、しばしばショック状態となります。
下痢便は特徴的な性状を示し、いわゆる「米のとぎ汁様」と表現される灰白色の水様便に粘液が混ざったものとなり、便臭に甘い香りが伴うことも特徴です。
下痢便の量は大量で、1日あたり10~数十リットルにおよび、深刻な脱水を伴います。
極度の脱水は全身血圧を低下させ、皮膚は乾燥して張力を失い、尿の排泄は著しく低下するか無尿となります。
血中の電解質、特にカリウムの濃度が低下し、全身痙攣を伴う意識消失発作を起こすこともあります。
そして、眼や頬がひどく落ち込み、「コレラ様顔貌」と呼ばれる特異的な表情を示します。
全数では発症者の5%程度が死亡しますが、全身管理を適切に行えないような医療アクセスの未熟な地域では、約半数が死に至ってしまう深刻な感染症です。
コレラの治療方法
コレラの治療は極度に進行する脱水症の補正が主体となります。
したがって、静脈内への点滴投与、あるいは経口投与によって、必要な水分と電解質を継続的に補います。
世界保健機関は、グルコース、塩化ナトリウム、塩化カリウム、重炭酸ナトリウムを水に溶かした経口補水液の投与を推奨しています。
特に発展途上国などの医療資源が十分でない国にとっては、経口補水液大量に製造・運搬が可能で、滅菌の必要がなく、安価であるなどの非常に多くのメリットを備えています。
さらに、この経口補水液による治療効果は非常に高いことも既に確認されており、世界中において積極的な普及をみせている治療法のひとつと言えます。
また特に重症の患者においては、種々の抗生剤を使用することもありますが、常に第一選択となるわけではありません。
コレラの感染経路
コレラの感染源としては、既発症患者の便や吐物、またはそれによって汚染された水や食物となります。
これら飲食物等を通して消化管内に入ったコレラ菌は、胃に到達したところで胃酸によって大多数が死滅することになりますが、そのうちの少数が生き残って小腸に達し、ここで定着すると急速に増殖することになります。
感染の局所でコレラ菌はコレラ毒素と呼ばれる有害物を産生し始め、細胞内にこれらが侵入することで種々の病態を引き起こします。
コレラ菌は感染力がとても強く、ペストに匹敵する危険な感染症と考えられていますが、これとは大きく異なり自然界においては人間を除いて感染しない細菌であることが知られています。
コレラ菌が流行時以外にどこで生存しているのかについては諸説があり、人体での症状を伴わない感染、海水中、甲殻類への寄生などが挙げられていますが、結論は現在までのところ明らかとなっていません。
コレラにならないための予防方法
日本においてのコレラは輸入感染症として認められることはあります。
日本の旅行者がコレラ流行地域を訪れ、感染を伴って帰国するというケースです。
しかし、日本において人から人への二次感染と考えられる症例はほぼ確認されておらず、近年の流行ももちろんありません。
したがって国内で主として生活される方が、日常的にコレラ感染を意識した行動を取る必要性は高くないと言え、一般的な衛生管理につとめることで十分なはずです。
一方で、なんらかの理由でコレラ流行地域を訪れる必要がある方は、まず飲食物に注意することが欠かせません。
コレラは基本的に経口感染ですので、汚染された飲食物を口にしない限りは感染機会を持ち得ないと言えます。
衛生的でない食材や調理環境を避け、十分な加熱調理をしていない生物や生水を口にしないようにすべきです。
さらに、流行地域への渡航を計画している場合には、事前に経口ワクチンを接種しておくことも選択肢であると言えます。
ただし、この経口ワクチンは日本国内においては未承認であるため、取り扱いのある医療機関に申し込むことで接種することが可能となります。