筋ジストロフィーの原因と症状・治療法やALSとの違い

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筋ジストロフィーの原因

遺伝子の異常によって起こります。

ジストロフィーとはdys(異常・不良・不全)trophy(栄養発育状態)という意味を示し、骨格筋の変性・壊死、進行性の筋力低下を主とする遺伝性の病気であり単純な筋肉の萎縮などではありません。

ジストロフィンという裏打ち蛋白(筋細胞の筋細胞膜で行われるカルシウムの流入をコントロールしている)が先天的に欠損していて、筋細胞膜の保持や強化、筋細胞間の必要な情報伝達に異常が現れます。

その結果、筋肉の萎縮・脂肪化・繊維化が引き起こされ筋力が低下、呼吸器や心筋、消化器障害などさまざま機能が障害されていきます。

筋ジストロフィーには遺伝形式や生じる症状の特徴などによって分類がされており、発症時期や進行速度などが異なります。

Duchenne型、Becker型(この2つで患者の約半数)、肢体型(LG型)、顔面肩甲上腕型(FSH型)などがあります。

筋ジストロフィーの症状

変異が起こった遺伝子によって症状は異なります。

〇Duchenne型(デュシェンヌ型)
・男子にしか見られない
・1~2才頃:一人歩きができるようになるのが遅い
・3~6才頃:転倒しやすさが見られる。
特に腰回り、太ももの筋力低下が顕著なため立ち上がる際の起き上がり方に特徴的な様子(*Gowers徴候:登攀性起立)や、階段を昇るのが難しくなる。
左右に揺れながら歩く特徴的な様子(*)も見られる。
・知的障害(軽度で進行しない)が見られる

*Gowers徴候(登攀性起立:とうはん性起立)
四つん這いの状態から手をついて、足を立たせ、膝を手で支えながら起き上がる様子

*動揺性歩行(waddling gait)
骨盤を水平に保つことが困難になるため歩行時に体幹を真っ直ぐ保ったまま歩くことができず、挙げた足と反対側の足に体幹を移動させながら歩く様子

・10才頃~:歩行することが難しくなる。脊柱や胸郭の変形が強くなり座位を保つことも難しくなり介助が必要になる
・ふくらはぎ(腓腹筋)が太くなったように見える仮性肥大が起こる
・アキレス腱が硬く萎縮するため、足先の背屈(反る)が出来ない尖足(せんそく)が見られる
・脊柱の変形が起こり、座位が困難になる。

進行が早く、特に命に関わる呼吸不全や心不全、不整脈などが10代後半から現れ20前後で死亡することが多くなります。

合併症や障害が起こる順序や年齢などは決まっていません。

〇Becker型
Duchenne型(デュシェンヌ型)の軽症型と言われています。
ジストロフィンは存在しますが、不完全で量も不足している状態です。
・男子にしか見られない
・小児期以降5才~25才頃に発症(成人になってから発症する場合もある)
下肢筋力低下などの運動機能障害から始まり、Duchenne型と同様の症状が出ますが、筋力低下が軽度で進行は遅く60才頃頃まで歩行が可能である場合もあります。

〇肢体型(LG型)
・男女ともに発症する
・5才~25才頃に発症(50代などの成人でも発症することもある)
・走れない、転びやすい、階段を登れない、手が上がらない
(下肢帯の筋肉が侵されていくが上肢帯にも障害が出る)
・Growers徴候がみられることがある
・ふくらはぎ(腓腹筋)が太くなったように見える仮性肥大や関節の変形や動かしづらさは軽度か出ないこともある
・経過や症状は多彩で歩行困難や重症な経過となる場合もあるが、進行が遅い場合が多い
・心不全や呼吸不全などの合併症が少ないとされている

〇顔面肩甲上腕型(FSH型)
・男女ともに発症する
・5才~50才代頃に発症
・顔面の筋肉が侵され、表情が少なくなくなる顔面筋の障害が必ず現れる
・両手を垂直に上げられない
(バンザイ出来ない。高いところの物が取れない、持ち上げられない)
・肩甲帯筋の筋萎縮が見られる
・筋力低下に左右差がある
・歩行困難となる年齢は様々であり、呼吸筋や心筋の障害などは起こりにくい

*翼状肩甲(よくじょうけんこう):左右の肩甲骨が翼のように盛り上がって見える。

〇先天性筋ジストロフィー(福山型)
・発症が早く乳児期の早期から見られる
・持ち上げてもしがみつかず、体がふにゃふにゃしている。ミルクや母乳の飲みが悪い、体重が増えない、寝返りをしない(筋緊張や筋力の低下の症状が全身に出る)
・全身の関節に拘縮(反れない、伸ばせないなど動きが制限される)が見られ、特に手指関節は乳児期から現れる
・知能障害が強い
・約半数に2~4才頃からけいれんが見られる(発熱時など)
・呼吸不全や心不全などへの進行が早く、合併することが多い
・ウィルス感染などが誘引で重度の筋力低下が現れると命に関わる

 

筋ジストロフィーの治療


確実に有効な治療法はありません。

有効な薬の開発や研究が進められていますが、現在は症状を緩和し合併症を防ぐ対症療法のみです。

呼吸理学療法士や理学療法士など専門家と一緒に行っていきます。

・筋力トレーニングは筋肉を傷つけてしまうため行われない
・関節の拘縮(関節の動きが障害され、反れない、伸ばせないなど動きが制限される)を防ぐため、関節可動域訓練といったストレッチ運動を行う
・側湾(そくわん)は背骨が極度に変形し、座れなくなるだけでなく、呼吸ができなくなる恐れもあるため手術が行われることがある
・デュシェンヌ型にはステロイド治療が行われる
・呼吸機能の低下を防ぐため、呼吸理学療法を受ける
(痰を出やすくする姿勢・体の向き、深呼吸の補助、呼吸筋の強化や呼吸の仕方など)
・飲み込む力や、呼吸筋の障害が進むと、人工呼吸器使用や胃瘻などの造設が必要となるが、鼻からの栄養チューブや胃瘻、人工呼吸器を補助的に使用していくこともある。
・心臓の機能が落ちると、必要な薬が処方されるなどペースメーカーで機能低下を補います。

感染症や怪我に注意
咳き込む力が弱く、うがいなどもこまめに行えないため風邪をひきやすくなります。
マスクや手洗い、口の中は濡れガーゼで拭うなど、口の中の清潔を保つよう意識しましょう。

 

ALS(Amyotrophic Lateral Sclerosis)との違い

・ALSは筋肉そのものの病気ではない
ALSは筋萎縮性側索硬化症と呼ばれる上位・下位ニューロンがともに編成することで、全身の筋肉が萎縮していく神経の変性による病気です。
筋肉を動かしたりするために必要な運動ニューロンと呼ばれる神経が障害されるため、筋肉が痩せていきます。

・ALSは原因は不明なことが多く、発症は成人以降
遺伝性である場合もありますが、90%~95%は原因不明で発症します。
ALSの発症年齢は高い傾向があり、幼児期や青年期での発症はなく20才以降主に中年期60才代~が多いとされています。

・ALSは症状の進行が早い
病状の進行が早く、人工呼吸器などを使用しない場合は3年~5年で全身の筋肉が萎縮し手足が動かせなくなり、呼吸筋が障害され自力呼吸ができなくなります。
発症初期は、症状が他の疾患と似ていることが多いため整形外科疾患や末梢神経の病気と混同されてしまうことがあります。

・ALSは外眼筋(眼の眼球運動)は障害されにくい
筋ジストロフィーでは、進行すると外眼筋が麻痺することがありますが、ALSでは現れにくいため眼の運動(動き)を利用したコミュニケーションが可能です。

・ALSは舌の萎縮や構音障害が顕著
構音運動に関わる運動神経が障害されるため、声が出しづらく意図して喋ろうと思っても正しく発音できないためコミュニケーションに工夫が必要になる。

・ALSは歩行困難はあるが、歩行姿勢障害は見られない
つまずきやすい、力が入らないなどの症状は似ているが、Growers徴候や動揺性歩行は見られません。
疲れやすさ、細かな作業がし辛いなど”筋肉を使って何かをする”という行為全般に異常を感じます。

*治療
根本的な治療法はなく、症状の緩和やリハビリを行う対症療法、進行を遅らせるための薬物療法(薬の内服)などがあります。
 

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